6月1日の早朝(5時50分)、山頂の大芦池に棚田の耕作者が集まりました。大芦池はかつて8000枚を超えると言われた上山の棚田に水を供給し、地域の稲作を支えてきた池。また、大雨の時には水を溜め、集落内に流れ込む水を減らす防災池としての役割も担ってきました。池のほとりには水神様が祀られており、冬のうちに溜めた池水を使用する前に、祠の前で今年度の農作業の安全と豊作を祈願することは毎年恒例の行事です。

お祈りが終わると各自のコップに注がれたお神酒をいただきます。
「朝から酔っぱらってしまうわー」といった声が響くのも毎年恒例です。


6時を過ぎた頃、水路ごとに流す水の配分を決めたのち開門です。上山ではこれを「水落し」と呼び、標高560mの山頂から標高200~300mほどの集落にある棚田に向けて、総延長約30㎞の水路を水が駆け下っていきます。
5月末までに掃除が完了した上山内の水路ですが、多少の落ち葉や土砂は残っているため、池水がそれらを押し流していきます。開門とともに耕作者たちは走り出し、流れる水を追いかけて水路に詰まりがないかを点検し、棚田に水を行き渡らせます。


劣化したコンクリートの塊を取り除き開通しました。

水が田んぼにたどり着いた後、続く作業は代掻き(しろかき)です。トラクターを使って水と土をかき混ぜます。水と混ざったドロドロの土が時間と共に落ち着くと、一枚の土の面が出来上がり、その上に水が溜まります。6月1日からの数日間は棚田団が所有するトラクター3台をフル稼働。田んぼから水を漏らさないように、この作業を丁寧に繰り返します。
トラクターの運転手以外にも、周りで作業をする人たちの役割も重要です。ぬかるんだ場所や傾斜の厳しい棚田を行き来しながら、次の田んぼに水を入れる準備をしたり、畦を補強したり、田んぼを平らに均したりします。


6月5日には上山の棚田を代表する「八伏(はちぶせ)の棚田」の水溜め作業が完了しました。達成感と共に、今年もなんとか水を溜められたことへの安堵の気持ちが溢れます。こうして文字で書くと数行のことですが、朝から晩までそれはそれは怒涛の数日間を経て棚田の景色がつくられていきます。
今年は棚田団メンバー・梅谷真慈のご両親が、現地で奔走するメンバーのためにお昼ご飯と夜ご飯を作りに来てくれました。みんなが作業に集中しつつしっかり栄養も取れて大助かりの1週間でした。

そして、6月6日からはいよいよ田植えがスタート。田植えは水路掃除や代掻きなどの作業と比べるとそれほど大変な作業ではなく、八伏の棚田でも田植え機を2台使えば1日あまりで終わってしまいます。しかし、そんな中でも何が大変かと言われると、傾斜のある棚田の中で「苗を運ぶ作業」でしょうか。今年もたくさんの方にご協力いただいて、田んぼに苗を運んでもらいました。






朝5時台から田植えをした日もありました。
機械による田植え作業が順調に進む中、6月8日には稲株主の皆さまとの田植え作業を行いました。61名の方にお越しいただき、子供から大人まで田んぼの泥にまみれながら手植え。たくさんの方にご参加いただくことができ、5月の水路掃除や苗作り、6月に入ってからの代掻きまで頑張ってきたかいがありました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

上山のもち米を使った「おこわ」

おかわり続出の美味しさで、6升完食。


(写真提供:滋慶学園)
英田上山棚田団は、上山地区内において八伏の棚田以外にも「後逧(うしろざこ)の棚田」と「空の棚田」で稲作をしています。面積で言うと、合計で約2ヘクタール。上に掲載した八伏の棚田がもう一つ分あると考えていただけるとわかりやすいかと思います。後逧の棚田の田植えは6月12日にすべて完了し、残るは空の棚田の代掻きの仕上げと田植えのみとなりました。
これから真夏に向かって、環境はより過酷になっていきますが、日々の水管理、雑草や獣害対策、草刈り作業に棚田団一同励んでいきます。
イベント日以外のお手伝いも大歓迎です!
メール、または公式LINE等からお気軽にお問い合わせください。





